ネパール料理・ミルミレ
大学時代からの親友Kが、谷中に遊びに来るという。
彼女もまた、谷中の魅力にノックアウトされている人間の一人だ。
ちょうど、谷中のおいしい店を発掘したいともくろんでいた矢先だったので、
谷中を特集した雑誌をパラパラとめくり、
Kが好きそうな店をピックアップする。
電車で谷中に向かう彼女に、メールをしてみる。
「イタリアンとネパール料理、どっち気分?」
「ネパール料理でお願いします。それにしても、寒いね~」とK。
「早くおいでよ。谷中はあったかいよ~」
そんなわけで、先週、ずっと行きたかったネパール料理の店・ミルミレにいってきた。
日本語の話せるネパールの女主人が迎えてくれる。
4人がけのテーブルが、奥と手前に2つ、
真ん中に長いカウンター、その向かいに、2人がけのテーブルが3つ。
こじんまりとしていて、山小屋のような、あったかい雰囲気。
なんだか、ここだけ日本じゃないみたい。
ネパールICEビール。
モモ。
やばい。
うっかり、おいしい。
ネパールより、ぜんぜんおいしい。
あ、手をつけたあとの写真ですみません。
ネパール焼きそば。
チョウミンという。
焼きそばなんだけど、ケチャップで味付けしている。
ナポリタンを、焼きそばで作るとこうなるのだと思う。
ネパールで、カレーに飽きるとよく食べた。
でも、ぜんぜんネパールで食べた時よりおいしい。
なぜ!
女主人に聞いてみた。
「ケチャップじゃないの。トマトソース、手作りなの」
どうりで、しっとりとして味わい深いはずだ。
「ネパールで旅行者に出すチョウミンは、すぐに作るから、ケチャップとか、味の素とか使うの。でも、家庭料理は、みんなこういう手作りなのよ」
なるほど~
あ、これって、出荷する野菜には農薬を使うけど、家用のものは無農薬で野菜を作るのと似ている。
そうそう、「女主人」なんて失礼な呼び方になってしまったのは、
名前を教えていただいたのに、うっかり忘れてしまったためで、ごめんなさい。
名前を覚えるのがとても苦手なもんで。
またすぐ行って、教えてもらおう。
特製チキンカレーと、サフランライスと、ゴマたっぷりのナン。
すごく、すごくおいしい。
チキンがほろりとやわらかくて、やさしい。
野菜と辛くないスパイスをたっぷりいれて、
コトコトコトコト何日も煮込んだ深い味がする。
こうゆう料理、大好き。
Kも、好きらしい。
さっきから顔が恍惚状態だ。
おいしいものを食べながら、
Kは、残業で会議して遅くなったことを、何度も「あー、やってらんない」とぼやいていた。
帰ろうと思ったら、「これから会議です」と会議室に呼ばれ、経費削減をテーマに話し合いが始まったらしい。
その時、思わずもれた、Kの一言…
「また金の話かよ」
となりにいた部長が、苦笑いしたらしい。
「あれは、私が言ったんじゃないよ、なんか、見えないモノに言わされたんだよ」と、霊能者のようなことを言う。
でもまあ、部長が笑ってくれるくらいなんだから、いい職場じゃないか。
女主人と、いろいろ話をする。
日本に来て驚いたことのひとつは、テレビで料理番組をいっぱいやっていることで、
言葉がわからない頃から、テレビで料理を覚えて、料理を覚えたのだとか。
今は、いろんな国の料理が作れるらしい。
トータルに日本の料理をマスターしてるわけですね。
おいしいはずだ。納得。
女主人に見送ってもらって、店を出る。
「ミルミレ」というのは、「夜明け」という意味なんだって。
なんだか素敵。
部屋に戻ると、11時を回っていた。
いけないいけない!あと1時間だよ。
風呂の用意をして、銭湯に行く。
世界湯がしまっていたので、初音湯にいく。
初・初音湯。
真ん中にお風呂があって、お風呂を囲むように、洗い場がある。
体を洗って、お風呂に浸かる。
熱い。
水温計を見ると、「43」を指している。
「こりゃ修行だね。」Kが言う。
「お湯が熱いですね」お風呂に入っているとなりのおばさんに言うと、
「水で薄めていいんですよ」と返ってくる。
修行に耐えられなくなり、水をガーっと足していると、
しばらくして、体を洗っている後ろのおばさんが迷惑そうな顔をして言う。
「水入れないでくれる?薬が薄まっちゃうのよ」
「あ、すみません。」急いで蛇口をひねる。「何の薬なんですか?」
「あそこに書いてあるでしょ、硫黄の湯なのよ」
は~!どうりで、肌がつるつるするわけだ~。
つるんつるんになって、Kと部屋に戻る。
ポカリスエット500mlを、二人で分けて飲み干す。
お風呂後・運動後・高熱時のポカリは、なぜこんなにうまいのか。
なぜ、普段は、こんなにグビグビ飲めない飲み物なのか。
とりとめのない話をする。
「告白することと、口説くことは、同じか、違うのか」
「学生の頃に戻りたいか。いや、戻りたくない。今が一番いい」
「体育会系の無茶苦茶な理屈を、会社の人材育成に持ち込むのは、どうなのか。
そういえば、私が最初に就職した会社でいじめられたときは、半分死んだような顔をしていた」
などなど。
ほんとにとりとめがない。
「そういえば、この前みてもらったことで、10年抱えてたものが、スッキリ飛んでいったよ。ありがとね」と、K。
「そう。よかった。」
涼しい顔をして言ったけど、ほんとは、すごくうれしかった。
スッキリが長持ちします。
新しい宣伝文句にしようかと思う。
あ、でも、みんなそうとは限らないか。
彼女がそうでよかった。
肩もみっこをして3時に眠り、6時半に起きる。
たまには、朝ごはんでも出してやるか、と、前日、パンとサラダを買っておいた。
「パン買っといたけど、食べる?」
きちんと自分の中に確認をしてから、彼女が言う。「いや、お茶でいい」
「そう」
ローズヒップブレンドを入れる。
朝の谷中の風は、とても気持ちがいい。
7時半に、彼女は仕事に出かけ、私はぬくもりの残ったふとんに、もぐりこむ。
まだ、初音湯の硫黄のにおいが、あまく残っていた。



















































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